動物園の象は一頭しかいなくて, 錆びついた檻を横目に大きな耳をこちらへ向けた. 吹きすさぶ風に立ち向かっているような淋しい顔だった. 風邪をひいた日に席替えを行われたような気がした.
あたしは太陽がみたい…太陽がなくちゃ生きてゆけない.
象のミズレはそう私に訴えた. I felt the same. 同感だった.
よく考えれば太陽は公転しない. 勝手に踊り続ける地球を前に私は立ち尽くしていた. 動物園ではお弁当を広げた家族連れが帰り, 暇を持て余した老夫婦が重い腰を上げた. 残されているのは鳩とミズレと私くらいのものだった.
ひとけのない動物園の中でミズレは啼いた. 世紀の真夜中という表現がぴったりくるいななきだった.
気づけば私にももうなにもなかった. 少なくとも明日までは…